さて、手術で移植された毛髪はその後、どのようにして成長していくのでしょうか。まずは自毛植毛の発毛プロセスについて述べる前に、毛髪の周期について説明したいと思います。
「再生医療とは:HARGとは」でも同様の説明をしていますが、正常な毛髪は以下の周期を経て、成長と脱毛を繰り返します。
1.成長期
毛乳頭から毛母細胞に栄養が供給され毛髪が成長を続ける期間であり、通常2〜6年間続きます。この期間内に毛髪が抜けたとしても、すぐに毛根から新しい毛髪が生まれ、再び成長をはじめます。
2.退行期
いずれ毛母細胞の分裂は徐々に弱まっていき、そこから生える毛髪も細く弱いものになってしまいます。通常退行期は2週間〜4週間ほどと言われます。
3.休止期
やがて毛母細胞は毛穴から押し出され、いっしょに毛髪も抜け落ちてしまいます。ここから新たに毛母細胞が活動を始めるまでには2〜3ヶ月と長い時間を要します。場合によっては、二度と再活動が起こらず、そのまま永久的な休止状態に入ってしまうこともあります。
これが毛周期(ヘアーサイクル)とよばれるものです。休止期が長く続くことで薄毛・はげが起こり、対策をとらないとそのまま二度と活動しない毛根がどんどんと増えていきます。
話を自毛植毛に戻しましょう。
まず、移植された毛髪はすぐに抜け落ちてしまいます。これは移植された毛髪の毛周期がいったんリセットされてしまい、休止期に入ってしまうことから生じる現象です。
個人差はありますが、おおよそ3ヶ月ほどでこれらの毛根は活動期に戻り、再び毛髪が生えてきます。とはいえ、周囲の毛と同様の長さ・太さに生えそろうまでにはさらに3ヶ月〜半年もの長い時間を必要とします。
手術後から移植の効果を実感できるのは短くて半年、長いと9ヶ月程度の期間を要するというわけです。
その間に起こる副作用であるショックロスも無視できません。これは移植部の周囲にある毛髪が抜け落ちてしまう現象であり、これによって移植部分がさらに目立ってしまうおそれがあります。
このように、自毛植毛は「効果を実感するまでに比較的長い時間を要する」「術後のケアが必要不可欠である」という宿命を背負っています。



